子宮頸がん検診で異常(高度異形成)があると言われた方へ 新たな選択肢のお話。
弊会では子宮頸がん検診を促進する活動を行う一方、「受診をしたからこその悩み」があることを活動を通して出会ってきました。子宮頸がん検診は他のがん検診に比べ非常に精度が高く、他のがん検診はがん細胞を発見する事が目的ですが、子宮頸がん検診は「がんの一歩手前(異形成)」の細胞も発見ができます。
それは、がん細胞で発見されるより非常に幸運なことではありますが、その事があまり理解されているとは言えない状況です。
子宮頸部異形成の約半数は自然消失しますが、中には長い年月をかけて、浸潤癌に進行して「子宮頸がん」に移行することもあります。
また、何年も中度~高度異形成が診断され続け「経過観察疲れ」になり定期検診に通うことをやめてしまい、不正出血で病院に行くと進行がんになってしまっていたという方にもお目にかかりました。
残念ながら異形成を無くすための飲み薬や塗り薬はありません。では、どんな選択肢があるのでしょうか?
自由が丘ちあきレディースクリニック
HP>>https://chiaki-lc.jp/
院長 飯塚千祥(いいづか ちあき) 先生にお話を聞きました。
初期のがんにも対応ができる標準的に行われている円錐切除術という手術と、新しい治療法レーザー蒸散術と言う2つの方法があります。
レーザー蒸散術とは何ですか?
広く医療分野で使われている方法で、炭酸ガスを用いたレーザーで患部を焼く技術です。
レーザー蒸散術は、どんな特徴がありますか?
円錐切除術は日本で広く標準的に行われている歴史のある治療です。子宮の頸部を円錐状に切除する外科手術で入院が伴うことも多い手術です。
一方、レーザー蒸散術は円錐切除術に比べ身体への負担が軽いのが特徴です。この手術の最大メリットは妊娠合併症のリスクが少ないことです。円錐切除術は子宮頸部を切除するので頸管が短くなり、切迫流産・早産のリスクが1.5倍に高まります。
これから妊娠・出産を考えている方にお勧めです。当院ではレーザー蒸散術の処置は日帰り、10分ほどの局所麻酔下で終わります。痛みがほとんどないのも特徴です。
どんな方を対象とした治療法ですか?
レーザー蒸散術は子宮頸部高度異形成に対する保険治療です。しかし、高度異形成では、円錐切除術に比較すると治癒率が劣ります。できれば中等度異形成の段階から将来的な癌への進展確率や自然治癒率を推定し、自然治癒しにくい方に早めにレーザー治療をすることが勧められます。また、上皮内がんになると、浸潤がんがすでに存在する可能性があり、切除した組織の診断ができないレーザー蒸散術では危険です。そのためレーザー蒸散術の適応条件(専門医による精度の高い組織診断・HPV型の特定・治療範囲の可視など)がありますので主治医に御相談下さい。
根治を目指すというよりは異形成消退させ、HPVの増殖数を減らすことで正常な状態(HPVの陰性化)に戻すことが目的です。円錐切除術でもレーザー蒸散術でも子宮を温存している限り根治ではありませんので、がんへの進展リスクを減らし、術後の検診頻度をのばすことが最終目的です。
当院ではレーザー蒸散術の相談のみ(セカンドオピニオン)も行っております。
レーザー蒸散術後の治療成績を教えて下さい。
高度異形成の場合約90%の病変消退率です。レーザー蒸散術は全部キレイに病変を焼けるとは限らないので、再び治療になることが円錐切除術より多いのは確かです。ただ、円錐切除術は子宮頸部が短縮するため生涯2回程度が限度なのに対し、レーザー蒸散術は何回でも受けることができます。
術後のフォローアップについて教えて下さい。
術後2週間以内で手術跡のチェック、3ヶ月間隔で経過観察を行っています。早ければ6ヶ月後にHPV検査をして、HPVが陰性化していれば癌への進展リスクが低下したと判定し、通常の年1回の子宮頸がん検診に戻ります。異形成の残存が確認された場合は再度レーザー治療を追加します。
最後にメッセージをお願い致します。
私は長年、婦人科腫瘍専門医として、婦人科がん治療に自負を持って取り組んできました。本当に多くの患者さんのがん治療を担当しましたが、がんに罹患し大学病院を受診する患者さんの数は減るどころか増えています。がんになってからの治療では、どんなに医療が進んでも限界があります。
子宮頸がんは特に原因も解明され予防出来るがんと言われています。優れた検診により「がんの手前」から発見ができ、感染を防ぐワクチンも開発されています。それにもかかわらず進行した状態で発見される子宮頸がんが後を絶ちません。本当に悲しいことだと思います。その為にも、かかりつけ医を持ち予防・早期発見をして頂きたいと思っています。